唇にキスを、首筋に口づけを



私はひたすらに何か埋めようとしていた。



全ての記憶を、払いたかった。




どうしてどうしてどうして、忘れられないんだろう。




思い出せば思い出すほど、



爽哉の、


笑顔や、戦ってる表情とか、私を心配している仕草だとか、悔しそうにする姿とか・・・




頭によぎっては、私の心臓を苦しめる。





「好き・・・

あの時に戻りたいよ・・・」




私は布団に包まってまたいつものように泣き出してしまった。



弱いなぁ、弱なぁ



爽哉がいなくなった度にこれだ。



私の精神も心も、全部全部爽哉で成り立っていたんだ。



だめだ、死にそう。

けど死んじゃだめだ。



そして私はふと思い出した。




「・・・遺言書・・・」




私はふとそれを思うと弁護士さんに連絡をする。



私の遺言書を、破棄してくださいと。




危険な職業であるから、と


結界師になる時に書いて、そのまま。



遺すものは大したことはないけれど、


遺す相手はいないから。





もう、親族はいないから。





「っ・・・」



私はまた涙を零してしまうのだ。




本当に、ひとりぼっちなんだなぁ・・・。





弁護士さんは私に渡すものがあると言って家に来るそうで。




・・・、なるべく、人に会いたくないんだけど。



しょうがない。



法とか、いろんな事に関係することだもんね。



私は久々に寝室からでて、


自分の酷い髪や顔を整えて、
弁護士さんを待っていた。
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