唇にキスを、首筋に口づけを



「ごちそうさまー」




爽哉は10分程度で朝食を平らげ、


自分の使った食器を洗ってくれる。




食べるの早いな、洗い物してくれるのは嬉しいけど。




「これ片すよー」




既に空になった、私の卵焼きがのっていた皿も洗ってくれた。




「ありがとう」




私はその間に全て食べきって、食器は爽哉に任せて洗濯物を干す。




ものの10分で終わらせ、自分の準備に取り掛かる。




・・・こういう時はやっぱり色を選んだ方がいいかな。




私は自分のクローゼットの前に立って考えた。




うん、



私は黒のフレアスカートにグレーに黒いロゴが入ったシャツを取り出した。




そしたら靴は黒のパンプスかな。




よし、決まり。




私は部屋着を脱いで着替える。




着替え終わって自分の部屋を出ると、
調度爽哉と鉢合わせになった。




「・・・準備、出来たみたいだな。」




「うん」




「行くか」




爽哉は車のキーを指でクルクルまわしながら階段を降りて行った。




私もそれに続く。




車の運転席には爽哉、



助手席に私。




「花持った?」




「うん、トランクに入れてある」




「バケツとかライターとか雑巾も?」




「うん」





「線香もあるよな?」




「あるって。」




「さすがゆりな準備万端ー」




「はいはい、行くよ。



道、混む」




「わかったよ」




爽哉はそう言うとアクセルを踏んだ。




随分進んだところで私は窓の外を見た。




・・・毎年、車の窓から見る景色。




今日は、


私の両親と、爽哉の両親の命日。




・・・私は目を閉じた。




・・・たまに、すごくたまにだけど、



思い出すと涙が止まらなくなるときがあるから。




だから私は記憶を塗り潰すみたいに瞼を閉じるのだ。
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