唇にキスを、首筋に口づけを



ポタ、


紙にどんどん、水滴が垂れた。




字が、爽哉のあんまり綺麗じゃない字が滲んでいく。


だめだ、濡らしちゃ。




私は涙を拭う。



けれど拭えない。



拭っても拭っても、出てくるから。



「・・・っ
爽哉ぁ・・・」




私も、私も大好きだよ・・・?


爽哉のこと、忘れられるわけないじゃん。


なんで、どうして、

爽哉は私をお嫁さんにしてくれなかったの・・・。



私、爽哉だったら喜んでお嫁に行くよ。




どうして、どうして今気づくのかな。




もっと早く気づいてたら。



もっと早く気づいてたら・・・私は、この愛おしい思いを、分かち合えたのに。




もっともっと、爽哉といたかった・・・。



でも、こんな私を、何年も愛してくれて、想ってくれて

守ってくれて、ありがとう。



爽哉の決意だったのに、私は狩りに出たいとかぼやいて、ごめんね。



私が戦ったりしなかったら、爽哉は生きてたよね・・・!



「っひっ・・・ぅぅ・・・」


やっぱり私が爽哉を奪ったと同然だ・・・。




「ごめんね・・・っ、本当に、ひっ・・ごめんね、爽哉
・・・」




命に変えてでも守るとか・・・



まさにそうだった。




私は、爽哉に庇われて。


それで今私の命はある。


爽哉の命はない。




爽哉は自分自身の決意を全うして、死んでいった・・・。



それだけでもすごいこと。




ダメだ、私は本当にクズだ。



私は、自分の意思さえも、まっとうできずに、生かされてる。



あぁ、私は本当にダメ人間なんだ。



やっぱり爽哉がいないと、ダメなんだ・・・。



私はそう思ってまた布団にくるまった。



爽哉の思いを知った今でさえも、活力が起こらないなんて、

本当に、命を手持ち無沙汰している、




人間の恥だ・・・。




< 202 / 257 >

この作品をシェア

pagetop