唇にキスを、首筋に口づけを


日が暮れて、俺は外に出た。



そして俺は、今、ある場所に行った。



____ゆりなと出会って、ゆりなと一緒に帰った夏の夜。




そこで別れた場所。




すうっと鼻から息を吸う。



・・・微かだ、本当に本当に微か。





消えそうだ。




当分外に出ていないんだ。




でも、ここから辿ればきっとたどり着ける。




・・・ゆりな、本当は隙とか、あんまねぇよな。



多少の隙はあるけど、やはりここから30秒で着く、とかの距離じゃねぇわ。




所々匂いが切れてる場所があるけれど、


なんとかたどり着く。




ここか。



俺はその一軒家を見据えた。




・・・濃いな、匂いが。



ずっとここに閉じこもっているんだな。




どこも明かりがついてない。




俺は辺りを見回して誰もいないのがわかったら、
ベランダに飛び乗る。



そして部屋の中を覗くと・・・





「「・・・!!」」




まさか、嘘だろ。


ゆりなが偶然か必然かベランダを凝視していたのだ。



ここが自室なのか。



ゆりなも驚いた顔をしている。


俺もしてる。



きっと、フワフワとした気持ちで外を見ていただけだったのだろう。




そして、声がした。





「なんか用・・・?」




グシャグシャの髪で、やつれた顔を少し横に傾げて。




そんなんことより俺は、



豹変した細すぎる首から、なんだか目が離せないでいた。




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