唇にキスを、首筋に口づけを
そして俺は中に入ろうと試みたが鍵がかかっていた。
するとゆりなはベッドに座っていた身体を起こしてヨロヨロと近づいてきた。
今にも、折れて崩れてしまうのではないかと言うほどの細さ。
まるで木の枝のようだった。
「・・・もう、用なんて、ないよね。
だって、爽哉は、もう、いないから。
あんたの・・・
お前の憎む相手はもういないから・・・!!」
彼女は叫んだ。
それはもう、悲痛に。
そして彼女は過呼吸気味に息を荒げながらクッションや色々な物を投げていた。
その姿が、とても痛々しくて、
助けてやりたい。
俺が暗闇の底から、
君の心を埋めてやりたい。
できないかもしれねぇ、
けど、できるかもしれない。
「ゆりな開けろ!
じゃねぇとこの窓割るぞ!!」
俺は声をあげた。
泣き叫んでいるゆりなに聞こえるように。
「割れば?割ればいいじゃん!
それで私にたくさん破片刺さって、
それで、
それで、
私、死んじゃえばいいんだ・・・!」
そしてまたわぁ、と泣き崩れる。
そして唸るように言っているのが聞こえる。
「ダメだよ、ダメだよ、
死んじゃダメ。
生きなきゃ。
私は、私は命を二つもってる・・・」
小さな声であった。
その彼女を、抱きしめてやりたくて。
俺は窓を割った。
彼女がハッとこちらを見つめる。
俺は一つ一つのガラスの破片を魔力で浮き上がらせ、
そして俺が中へと入り込み、
パチンと指を鳴らせば、
ガラスは元通りになった。
そして振り向いた時だ。
「・・・っう・・・!」