唇にキスを、首筋に口づけを
心臓の辺りに、激痛が走る。
俺が胸の辺りに視線をやると、
ハサミが突き刺さっていた。
・・・あ。
そのハサミを持っているのは、ゆりな。
俺はそのままゆりなを抱きしめた。
更にハサミが俺の身体を突き破る。
あぁ、痛い。
「や・・・!
やめてよ・・・!!」
ゆりなは中でもがく。
俺はそれを制するように、さらに力を込めた。
「やめてって、言ってるじゃん!!」
ゆりなはそれでも悲痛に叫ぶ。
数秒たつと彼女はまたシトシトと泣き始めた。
感情の上がり下がりが激しい。
しょうがないことだ、
大切な人を失って、目の前には、
大切な人を奪った者の仲間がいるのだから。
「私じゃ・・・っ、
私なんかしゃっ・・・ひっ、
ヴァンパイア一つもまともに殺すことができないなんて・・・っ、
やっぱり、私には・・・、
私には爽哉が必要なんだよ・・・っひっ。」
俺の心が痛む。
心臓ではなく、心が。
それでも俺は受け止める。
「あんたなんかの、
冷たい身体じゃなくて・・・
爽哉のあったかい身体がいいよ・・・。
やだよ、もうつらいよ、
・・・忘れたい・・・」
うう、と彼女の身体が揺れる。
俺はそこで、
何かが切れた音がした。
俺の大切な、
何かが。
それが何かはわからないけれど、
その瞬間に俺は彼女の手首を掴んで、
ベッドに押し倒していた。
そして
「忘れてぇなら忘れさせてやる。
言われようもねぇ快感でな」
そう言い放った俺の目は、
きっと獣だったんだと思う。
切れた何か、なんて。
それは理性だ。