唇にキスを、首筋に口づけを





「いいよ

俺はそれで。


ゆりなの心を埋める道具になることだって、構わない。」



そっと、優しい声色で言うのだった。


そして彼は私の肩に顔を埋める。



そして、なんだかもぞもぞと動いてる。


そして首元に熱と痛みが走った。



「っ・・・!?」



私は思わずビクッと肩を揺らして結界を張ってしまった。



私とヤツの間にバチっと電流が走るように、私はヤツとの距離を置く。



・・・え?


噛まれた・・・?


なに、なんなの、今の。



最悪最悪。



やっぱり、敵なんか、一緒にいるのもいけないことだ。



いつ反逆されるかわかったもんじゃない。



なんで、この人はとっても嘘が上手なんだろう。



私はそれにいともあっさり嵌る。



「・・・矛盾、してるんだけど

言葉と行動。」



私は敢えて荒ぶらずに冷静に言う。



するとヤツは真剣な瞳で首を横に振るのだ。



「違う、誤解だ。


俺は牙を立ててなんかいない。」




必死に弁明する表情。


眉間にシワがよって、美しい瞳は透き通って向こうの先までもが見えそう。



でも・・・


私は自分の首に手を当てる。



傷跡のようなものは感じられない。


血も、ついてない。




「・・・じゃあ今のは?」




私は冷静に淡々と一定の距離を保ったまま尋ねる。



するとヤツは少し目を逸らして。



動揺?なに?やっぱり嘘なの?




「最低」



私はそのまま言い放つ。



勝手に言葉が出てきた。口から。考えるより先に。



私が言うとすぐにコンマ1秒、すぐにヤツが口を開いた。



「違う!!

シルシだ・・・!」



それを発するとヤツはハッとした表情ですぐに俯いた。



・・・シルシ?



・・・魔除け、だっけ。



・・・なんで、そんなに怪しいそぶり見せんのよ。



なんか、おかしい。



多分、牙を立てなかったって言うのは本当。



けれど、何か隠してる?



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