唇にキスを、首筋に口づけを



私はたまたま側にあった手鏡で自分の首元を覗く。



すると、目に入る紅い華。



・・・っ


確かに噛み跡はない。



けれど、何故そんなに様子が変なの?





なんだろう、何を、隠している?




「・・・何を、考えているの?


・・・このシルシ、なんかあったりするの?」



ドクンドクン、私の心臓が高鳴る。



危機感によって。



私にとってマイナスのことか否か・・・。



ヤツはぷいっと顔を背ける。



・・・何、なんなの。



・・・言いたくないほどの、秘密があるの?



「・・・言わないなら、出てって。



・・・二度と私に関わらないで。」



ふとカップを見ると、もう湯気は消えていて、すっかり冷めきっている様子であった。




ヤツはカッと顔を上げる。



私はその様子に思わず退いて怯んでしまった。




ヤツは口を開いて何かを言おうとしたり、


けれどそれを噤むんだり、
そんなことを何回も繰り返している。



そしてやっと


「・・・わかった。言う。言うよ」



・・・はぁ、なんて一つ息をついている。



早くいって欲しいような、言わないでほしいような。



さらに鼓動がドクドクドクドク音を立てる。



「・・・そのシルシ・・・

ゆりなの防御能力を上げる効果がある・・・。


前に言っただろう?
魔除けだと・・・。




つまり、そういうことだ。


そのシルシがある限り、ゆりなの結界の能力は常時より向上する。」



そう言い終わるとまた私から目を逸らすのであった。




・・・え?




・・・どういうこと?



私の結界の能力があがる??



・・・だから、ヴァンパイアを結界によって消滅させる力があったのか。



そして今日はシルシが消えていた、だからヴァンパイアを消せなかった。



・・・けど、なんでそんなことを??



どうして?意味がわからない。



コイツと私は敵同士で、私を助ける義理なんてさらさら無い。



意味がわからない。


コイツの意図が全く読めない掴めないわならない。




「・・・どうしてそんなことを?」



私はいたって淡々に、そして冷血にその質問を放った。
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