唇にキスを、首筋に口づけを



そしてパチリと目をさますと。



「!?

13:13!?」



私はスマホのディスプレイに映し出される時間に目が飛び出るくらいにびっくりした。



「やってしまった

小一時間程度ならと思ったのに。」



「そういう日もあるだろう」




「あんたが言わないで。」



私は大人しく腕を話してくれたジュンから離れて遅めの朝食兼昼食を摂ろうと考える。



冷蔵庫をあけて何が作れるかなーとか考える。



ええい、今日は少し凝ったものを作ろうでないか。



そして私は遅く起きたにも関わらず随分と気合いの入ったごはんの準備をした。


食べれる時間になったのは14:00



豆腐とワカメの味噌汁 出し巻き卵 鯵の干物 かぼちゃの煮付け。



一品一品作れば簡単だが、

数が増えれば手際の良さが必要になる。




私は特に考えもなしにぼーっと2人分作った。


2人分作るのは久々だった。


けれど、数年は2人分に慣れていたのだ、感覚を忘れるわけがない。






リビングのソファーに座っているジュンに声をかけようとしたところで思い出す。



あれ?ヴァンパイアって普通のご飯食べるのか?とか。




「ジュン、食べれる?」



ありがとう。


食べれる。」



そう言いながらジュンは椅子に腰かけた。



「え


じゃあ、血は?

血は何のため?」



目の前には出来立てでおいしそうなご飯があるのに物騒なことをきく私。



「栄養を摂取するのは血からのみ。


他のものは体に吸収されず体外に流れ出るだけだ。


いわば嗜好品。


味はちゃんと感じる。」




「へぇ

もったいない。」




「そんなことないだろ。


俺は少なからず食べることが好きだ。



なんといってもゆりなの手料理。


これほど嬉しいことはない。」



そう言ってジュンはニコリと笑うのだった。




私はそれを見て。



「気味が悪いなあ」



「なんだいきなり。ひどいな」



「だって、

なんか人間みたいに笑うから。」




するとジュンは一瞬キョトンとして、

すると大きく笑い始めた。



「ああ、ゆりなといると自分が人間になった気分になる。



なんなら人間になりたい。


ゆりなと何の隔たりもなく接したい。」



その言葉をきいて。


確かにジュンは明るく話していた。


けれどほんのり切なさを含んでいた。



私はそれに気づかないふりをする。



いやだ、なんて思ってしまった。


ジュンと私が敵であることが。



こうしていることは、本当はいけないことじゃないか。



ああ、考えたくない。



私はジュンの言葉を聞かなかったことにして、

いただきます、と手を合わすのだった。



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