唇にキスを、首筋に口づけを

ジュンも私につられて箸を手に取る。



箸の使い方がぎこちなくてもどかしい。



「スプーン持ってこようか?」




私はいてもたってもいられずに声をかけた。





するとジュンは苦戦しつつ、


「結構。使える」


しかしそういった直ぐ、つるんとかぼちゃを落とす。



ジュンはうっ、と顔をしかめた。



「ふっ・・・」



私は思わず笑い声を出してしまう。


我慢してたのに、たえられない。




するとすぐにジュンが顔を上げた。



「なんだ。」



「強がらなくていいんじゃない?」



私は笑いながらスプーンやフォークを持ってこようと席を立つ。




「大丈夫だ!

心配は無用。」



またトライするジュンだがポロポロとこぼしている。




私は無言でスプーンとフォークを差し出す。




少し硬直したジュンであったがすぐにそれを使った。


そしてやっと一口口に運んで




「おいしい」


なんて言うのだ。



今までにない笑みで。



・・・きゅん



・・・って、

は?


今の何。



きゅんって胸が狭くなって。


胸の中で木が揺れてるみたいな。



・・・おかしい!!!



何を考えてる、私は・・・!




「これはなんだ?」



小さな子供みたいに初めて見る食べ物を指差す。



「それは豆腐。」



「ほほう、柔らかいな。」



そう言ってなぜか味噌汁の豆腐を潰し始めた。



「こら!食べ物で遊ぶな!」



ジュンは私のいきなりの大声に驚いたのか、
びくっとしたが、

すぐに、



「悪い!
思わず・・・!」



あわあわとしだすジュン。


なんだろう、こいつ。



やっぱり、悪い人じゃないとか、思っちゃう。



素直で、純粋で、本当は優しい。



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