唇にキスを、首筋に口づけを
「・・・ひと肌恋しいのだが」
そう真面目な顔で腕をこれでもか、と伸ばしてくる。
けれど私の背中に回してはこない。
何を求めているのやら。
まさか、私から抱きしめるなんて。
するわけない。しちゃいけない。
狩人、結界師としてのプライド。
絶対にダメ。敵なのに。
「ゆりなが帰ってこないんじゃないかと思うと、不安で不安で頭が変になりそうだった。」
そう、目を垂れ下げて言い放つジュン。
語尾が消えそうで。
なんかかわいそう。
以前の自分を見ているようで思わず手が伸びそうになった。
ぐ、っと堪える。
「今日はゆりなから俺を慰めてくれないか」
とても、なんとも言えぬこの胸の動揺。
ざわざわして、なんか叫びたくなる衝動。
なんでなんか、可愛いとか思っちゃったのかな。
コイツ、獣だよ。
・・・あぁ、でもそんなことない。
ジュンはちゃんとよく接してみたら、温かみがあって、
優しくて、人間性溢れる人だ。
そう思うと、私からジュンへ伸びる腕が止まらなかった。
ぎゅっと、彼を抱きしめていた。
するとすぐに私の背中にもジュンの腕が回される。
「ありがとう、ゆりな」
そう、安心した風に言うのだ。
「ゆりながここにいる。
あぁ、安心した。あったかいな」
ああ、何やってるんだろう私。
けど、まぁヴァンパイアと暮らすとか、体の関係を持ってしまったこともあるし、
同じベッドにいるし、
これ、かなり狩人、結界師として危ないラインを歩いているんだよね。
抱きしめるとか、もうそんなラインには及ばないっていうか。
もう考えていられないっていうか。
ああ、なんかジュンがとてつもなく愛しい。
ずっと、抱きしめていたい。