唇にキスを、首筋に口づけを
「ゆりな?」
ジュンがどこか悲しげな声で私の名を呼んだ。
私がショック受けたと思ったかな。
違う違う、
「あ、あった」
ペンたてから引き抜いたのは黒いマジックペン。
極太、とある。
私はテキトーな紙にインクが出るかを試し書き。
よし。
そう思って私はまたベッドに潜る。
「ねぇ、どこがいい?」
私はジュンの目を見て尋ねる。
「は?」
ジュンは眉をひそめる。
「私の所有シルシ、
どこがいい?」
「所有って・・・
そんな風に、思ってるのか?」
ジュンが潤しげな目で聞いてくるから思わずひるむ。
ちょっと、それは反則。
どうしよう、だって、言えないし。
私は笑っておいた。
そしてまくしたてるように、
「ねぇ、どこがいい?」
「よくわからないが、見えるとこ。」
ジュンが不安げに私を見ている。
見えるとこか、どこだろう。
でも私からも見えるのは後から少し恥ずかしい気もする。
んー、と考えた末、胸筋につけることにした。
私はマジックペンでジュンの身体に刻むように、書く。
ゆりな
私の名前。
「え、なにこれ。
ゆりな?」
「うん。
名前書いとこうと思って。」
これなら消えないでしょ?傷ってわけじゃないし
そう私は続ける。
「ありがとう、
すこし、こそばゆい気もするが・・・ 嬉しい」
そう言ってニコリと笑うのであった。
私もそれに、笑って返した。