唇にキスを、首筋に口づけを



けど、けどさ。



まさか、こんなすぐに、何の前触れもなくその日が来るなんて、思ってもなかった。



自然と、頬に水滴が伝う。



流れて流れてとめとない。




胸が痛い、というより、


胸に何もない。心臓に何もない。


肋に空洞ができたみたいな。


あぁ、あれだ。


あの表現。




心にぽっかり穴が空いたような。



これだ。



・・・あぁ、どうしてだろう。



なんで、ジュンは出て行ったのかな。




なんで、ジュンは何も言わずに。



なんで、ジュンはどこに行くとも言わずに。




一番の疑問点は、



なんで、私は泣いてるの?




どうして、悲しいの?

いやいや、別に、悲しくなんかないよね、私。



だって、相手は敵だよ。



そうだ、これでよかったんだ。



遅かれ早かれこういう時が来るはずだったんだ。



・・・早いことに越したことないし。




私はそう思って大きく深呼吸した。



別に、辛くなんかない。苦しくなんかはい。悲しくもない。




私は紅茶を飲もうと準備した。





けれど・・・
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