唇にキスを、首筋に口づけを
距離
-ジュンside-
いつのことだったか。
こんな暮らしが許されないというお告げが来たのは。
確かとても寒い日。
真冬の日。
今日も今日とて、ゆりなの帰りをひたすらひたすら待っていた。
そして、
ピンポーン。
8:30過ぎ頃。
??
おかしいな、こんなに早く帰ってくるはずがないし、ゆりなは家に入るときにインターフォンは押さないはずだ。
俺は不思議に思いながら小窓から外をの覗く。
すると見慣れた顔。
「・・・っ」
俺はもう来たか、と思いつつ扉を開けた。
「・・・こんばんは、ジュン・ラウド・ウィットさん」
「・・・こんばんは」
俺は静かに挨拶を交わしていた。
「私のこと、忘れたとは言わせないよ?」
忘れたいくらいだ、すっとぼけたい。
けれど何年もの間、俺たちの専属のスパイだ。
忘れるわけがない。
「・・・コンドウ」
「はい、どうも。直接会うのはお久しぶりね。」
「そうだな。」
「・・・というか、なんてことするの?
せっかく私の声で中川ゆりなをおびき寄せて討とうと思っていたのに。」
はぁ、なんて冷静なため息。
ゆりなの前で作っていた明るくてお茶目な友人という役柄とは全く異なっている。
「・・・別に俺の勝手だ、黙れ、穢らわしい混血が。」
俺は吐き捨てるように悪態をつく。
「はいはい、どうもすみませんでした。」
「要件を早く言えよ。」
要件なんて、知ってるも同然だがな。