唇にキスを、首筋に口づけを



「あなたのお父様からの伝言よ。」



・・・はぁ。


そんなん知ってるわ。



するとコンドウはこほん、と一つ咳払いをした。





「どこをほっつき歩いているかしらないが、さっさと帰ってこい!!


お前は国王様のお世継ぎは娘さん一人しかいないことを知っているな、


ジュン、よく聞け。



お前が花婿候補に選ばれたのだ!!

一か月後、国王様の城へ行く、


早く帰ってくるように!!!




・・・だそうよ。」




無駄に少しだけ似ているのがうざったい。



・・・はぁ、まじかよ。



ただ帰ってこいなら分かる。



けどまさか、


俺が花婿候補?


実際婿入りなんてしちまったらそれこそ国王?



ふざけんな。




「帰らねぇ。」




するとコンドウはフッと鼻で笑った。




「なんだよ。」




俺はコンドウを睨みつける。




「あなた、馬鹿なの?



あなたの大切な人、殺しちゃってもいいのよ?



だってあの子、


私のこと信用しきっちゃんてるんだもの・・・!」



すると奴は高らかに笑った。



「な・か・が・わ・ゆ・り・な!」


ハハッと甲高い声が響く。


うざい。



「私の良心から、
あなたが結界師の家に厄介になっていたなんてことは黙っててあげる。



私の面目のためにも、一か月後以内に早く魔界に戻るのよ?」



するとコンドウは踵を返して俺の前から去った。



・・・ふざけんなふざけんなふざけんな。




俺が魔界に戻らなければゆりなが・・・?




ゆりなを?



なんでだなんでだ、


やっと、やっと今、

心が安らかになれているのに。



心が、満たされているのに。



愛する気持ちを知ったのに。



なんで俺はこうも・・・




けれどゆりなを死に追い詰めることはできない。



・・・仕方ねぇ、


一生会えないわけじゃねぇし、


あくまで花婿候補、だ。


嫌われる男を演じて早くここに帰ってくることにしよう。



そう俺は決めた。




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