唇にキスを、首筋に口づけを


久々に再会したミラから着替えを受け取る。



ミラも眉をひそめ、複雑そうな顔つき。


そうだよな、俺の肩を持つような発言は迂闊にできない。



ミラは俺の専属。


しかし、ミラにとっての主人は親父だからだ。



なんだか、空気が一枚重い。



この屋敷に俺はまるで結界を纏って入っているかのような感覚。



距離がある。




いや、距離がある方がいい。


馴染めなくていい。



早く、ここから出たいのだから。



___________


翌日の夜。


それはもう、美しい満月。



しかし、満月の日はヴァンパイアの種族の力が一番低下する日。


最も警戒する日なのだ。



何故こんな日に見合いを・・・


国王の気が知れたものじゃないな。




俺はかっちりとした燕尾服を着て家を見送られながら出る。



「まぁ、ジュン様。
麗しい・・・!」



「ますますご主人様に似ていらっしゃるわね」



メイドたちの賞賛の声も翻らせて、

俺は馬車に乗り込む。




馬車の揺れが、俺の心情を表すようだ。


揺れるたびに、揺れる俺の心臓。



ドクン、ドクン、

と血が流れていく。



俺の中での重要な儀式だ、この見合いは。


失敗すれば国王、成功すればゆりな。



ああ、失敗することを想像しただけで頭がクラクラして倒れそうだ。



俺はなんとか気を持ち直して、なんとか顔を引き締めると、

いつの間にか国王の城までやってきていた。



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