唇にキスを、首筋に口づけを



馬車の揺れが静かになり、いずれ止まった。



使いの者が先に馬車を降り、


俺はそれに続いて静かに馬車を降りた。





そして国王の城を見上げた。




長いカーペットを伝って歩くと、次第に横並びにザーッと列になっている国王の使いの者たち。




いらっしゃいませ、


と挨拶をされる。



一つ会釈をして俺はそこを颯爽と歩く。




客間に通され、俺は静かにそこで時を待った。



部屋には一つの茶色い古めかしい大きな時計がある。



ボン、ボン、と針を刻んでいく。



時が、流れる。



それにしても他の候補者は・・・どこへ。


花婿候補が俺だけのはずがない。



・・・きっと他の客間に通されているのだろうな。




そう一つの考えに着地点をおいてから、俺は一つ大きな深呼吸。



俺は集中していた。



それからどれ程時間が経過したか。



ふと、現れたメイド。



肌は白く目は朧げで愛想も悪い。


生きてんのか、


まぁヴァンパイアなんてこんなもん。



俺が人間らしくなり過ぎただけだ。



俺はそのメイドに着いて行く。



そして一つの大きな扉の前に立たされた。



「・・・国王様が中でお待ちです。」



そう生気のない声で言うとそのメイドは去っていった。



コツコツという足音が聞こえなくなるまで待って、

俺は扉をノックした。



「入るが良い。」



野太く、凛とした声。


これが国王。


初めてお目にかかるな。



俺はコンコン、と一つノックして扉を開いた。



すると次の瞬間。



ガッ・・・!!!



何かを振りかざす、
空気が振動する音。



・・・!?



俺は一瞬で何かを悟り飛び、避けて、その何か と距離を取る。



なんだ・・・今のは!?







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