唇にキスを、首筋に口づけを



私達は無言で車に戻った。




トランクに荷物をのせ、


私達も車に乗り込む。




「・・・」




「・・・」




・・・はぁ。




どうしよう、



思い出して来ちゃった。




あの日のこと。




・・・忘れたいのにな。





あの、光景は。




また、記憶を塗り潰すみたいに目を閉じる。




その時だ。




――――ギュ




右手に、温もりと力強さを感じたのは。




え・・・?




思わず私の右手を見た。




・・・、私の右手はゴツゴツした、

爽哉の手に包まれてる。





私も強く、握り返す。




・・・爽哉も、だよね。




爽哉も目を閉じてる。




記憶を、塗り潰してる。




あの、嫌な記憶。




あの、嫌な景色。




あの、嫌な音声。




どれも、脳から張り付いて離れない。




お母さん達が、殺された光景を・・・、



消したい。





・・・私達が15歳の時、



4人は死んだ。




この世界には、公には知らされてないけど、


ヴァンパイア、という生き物が存在する。




魔界に住んでる、ヤツ。





うん、あれ、



血を吸うとかいう、あれ。




あの、恨めしき獣。




そんなヤツに、4人は殺された。




お父さんと爽哉のお父さんは、

ヴァンパイアを殺す狩人。




私のお母さんはヴァンパイアの攻撃から身を守ることができる結界師。





爽哉のお母さんは本当に無関係な一般人だった。





そんな4人は毎日のように夜中、狩りに出ていた。




私達に絶対に外に出るなよ、



と念には念、更に念くらい押して。




怖いくらいに言ってくるから私達は頷いていた。
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