lucky×unlucky
「…まぁ、いいわ」
紘香は暫く指で机をトントンと鳴らした刹那、ピタリと止めて徐にブレザーのポケットから携帯を取り出すと
慣れた動作で誰かに電話を掛け始めた
「ーーあ、もしもし?うん。あの様子じゃ多分聞かないとおもうから、予定通り決行するわ。」
そう言って一方的に通話を切ると、私達の方へ視線を戻して不敵に笑う
「彼女にちょっとだけ痛い目にあわせましょう?恭平くんと亮介くんはみんなのものなんだから。独り占めは良くないわよね?大丈夫。みんなでやればきっと上手くいくわ」
甘い甘い声で囁いて、みんなを毒していく
それは媚薬に似た劇薬
私を除くみんなはうっとりとした顔を浮かべて大きく頷いた
「………」
…なんだろう
この紘香に対する信仰にも近い異様な光景は何度も見たが、どこか違う
なにか大きな事が起きるのではないかという不安に駆られるが
気付いたところで紘香には逆らえない
きゅっと唇を硬く結んでやるせない気持ちで徐に紘香を見上げれば、ずっと見ていたのか視線がかち合う
紘香は口角をあげてニヤリと笑い、小さく口を動かした
"逃げようなんて思わないでよね"
「……ッ」
声は聞こえなかったが確かに潤った艶やかな唇はそれを語っていた