lucky×unlucky
ほんとに数秒間の出来事だった
たまたま保健室の窓が空いていて、剥ぎ取ったシーツは強い風になびいて彼女の顔を遮った
「やッ…!!」
「……ッ!!」
いきなり吹き込んできた風に俺達は反射的に目をギュッと瞑る
桜の花弁が外から入り込み、
吹奏楽のどこかで聞いたことのあるような合奏が聞こえてくる
あー…そういえば今日入学式だっけ?
だから保健のせんせーも居ないんだ
なんて、頭の片隅でそんなことを考えていた
サァァァ――――――……‥
やがて風が止み
目の前には下を俯いた篠宮がいた
「………」
緩めに括っていたゴムは取れ、長い艷のある黒髪がサラサラと揺れる
わ…すげー綺麗な髪
ヘアゴムの跡一つついてないし
手元へ視線を移せば、眼鏡は彼女の手の中にあった
「……しの…」
俺はシーツをその辺に捨て、吸い寄せられるように彼女の頬に手を寄せた