姉妹
プロローグ
蝉の声がこだまする。ちょうど正午らしい
うだるような暑さだ
夏だ、日本の夏だ
このなんとも不愉快な湿気、どうしてくれようか
あぁ、夏って嫌だわ
…思い出してしまうから
すっと深呼吸をして黒いヒールでしっかりと一歩を踏み出した
キリリとした聡明な瞳、さらりと風になびく髪、すらっと伸びた手足、どこかピリッとした雰囲気、その全てが彼女に似合っていて、人を魅了せずにはいられないようだ
旅客ははっと女性に目を奪われる。空港の空気が彼女に飲み込まれる
「美紅、美紅、おーいこっちだよ」
エントランスの方から男性が千切れんばかりに手を振っている
特に美形というわけではないが好感の持てる顔、中肉中背、
しかし彼の顔中に広がる笑顔には、彼女とは違う種類のそれだが、人をひきつけてやまない不思議な魅力がある、一言で言うなら太陽のような男性
「晴樹、来てくれたのね」
ぱたぱたと男性のもとへ走ってゆく。その足取りは見違えるほど軽い
さっきまでの美紅の張り詰めた空気は完全に消えて、優しい笑顔になった
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