姉妹
美紅の目はもはや周りの光景を写してはいなかった

怒りという感情を有栖川絵梨花だけに焦点を絞って当てている感じだ

その鋭い眼光を惜しみなく彼女に浴びせ決してそらさない

それこそ視線で彼女の体に穴でも開きそうだ


美月は美紅にだけは見られるべきではなかったと後悔していた

もはや絵梨花の理不尽さに対する怒りなどとうの昔に消えている

今は彼女が危ない

こうなってしまった美紅の視界に入ることさえ危険なのだ

美月は冷や汗をかいた

なんとかして、絵梨花を避難させなければ

七年前のような「制裁」が下される前に…


「取り消せ取り消せ取り消せ取り消せ」
「っ、なんなのよこいつ、あんた異常よ、」
「!」


美紅の目が殺人犯のそれになった

美月はいよいよ本格的に危険を察知した

「有栖川さん、早く逃げなさいっ」
「はぁ、美月、あんたなんなのよ」
「いいから逃げなさい!早く!」

美月の異常な焦りと美紅の刺すような視線に戸惑いながら絵梨花は逃げ出そうとした

「逃がすか…謝ってもいないのに…」
「ただ一言、ごめんなさいも言えないの?」


こんな奴

痛い目に遭えばいい

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