姉妹
「なんだったら俺の貸すけどー?」
「落書きも楽しめて一石二鳥!!」
へらへらした軽い口調の男が締まりのない笑顔で近づいてくる
この男はなんでこうもタイミングがいいのだろう
「和也、お前の落書きはやばいって。美月ちゃんに見せていい代物じゃないだろ」
「え!?ちょっと姉さまにワイセツな落書き見せないでよ」
二人の戸惑いと必死な牽制もどこ吹く風、というように和也はへらへら笑いながら教科書を渡した
「やめなさいって」
「駄目だって」
「美月ちゃん私の貸すから!それだけはダメ!」
やがてクラスの人たちが口々に輪に入ってくる
「いいじゃんいいじゃん」
そういいながら笑っているこの男も同様に周りを巻き込んでいける人間なのだ
「ふふっ。あははっ」
教科書一冊借りるくらいでどうしてこんなに考えて、こんなに事を大きくしているのか
ばからしいようなむなしいような気分にさせる、気付かせる、和也はそんな人間なのだ
「落書き、みてやろうじゃないの」
美月は微笑みながら受け取った