姉妹
「盗み聞きは良くないよ、絵梨花ちゃん」
和也は前扉に向かって声をかけた
「盗み聞きする気はなかったわよ」
入りにくかっただけ、とぶっきらぼうに絵梨花は言った
「ここからだとね、中庭がよく見えるんだ。君が泣いているところもばっちり見たよ」
「…悪趣味」
「どうもありがとう。それで、顔を上げた君が教室にいる俺に気付いて話をしようと教室に急いで来たけれど、まだ美紅ちゃんとお話し中だった。なんとなく入りにくかったから、泣きはらして赤くなった顔を落ち着けるついでに盗み聞きしていた、って感じかな」
どうだ、と言わんばかりに和也は絵梨花を指差した
「…あんた最悪ね」
ありえない何この男、というのを隠しもせず顔に出した
「君は正直だなぁ。美紅ちゃんとは別の種類のね。で、俺になんか話あるんでしょ?」
絵梨花は逐一癪に障るのをなんとか押さえた
「あるわよ、山ほど。聞きたいことも不満も疑問も」
「大歓迎だよ」
和也はいつもの顔を始終崩さなかった