姉妹

「私、もう帰るわ。そろそろ閉まっちゃうわよ。」



絵梨花はそのまま数歩歩いてドアに向かった



「…」



和也はその後ろ姿を何とはなしに見つめていた


途端、絵梨花が振り返った





「あなた、美月が好きだったのね。」



「きみこそ」



「本当に理解して、愛していたのね。」



「それは君だって同じだろ?」

「ばかいわないで。あなたとは違う。」


間発入れずに絵梨花が遮った




「私の方があの子を好きよ。比べ物にならないくらいね。私以上にあの子を好きなんて、認めたくないけど美紅くらいなもんだと思うわ。」



絵梨花は矢継ぎ早に言葉を続けた



「でも私とあなたは好きの方向が違ったのね、きっと。だって同じだったら、あなたに負けるわけないもの。」



絵梨花は大きな大きな瞳に涙をいっぱいにさせているようで、涙が教室に差し込む西日に反射して輝いていた



「負けるわけ、ないの。」


こぶしを握り締めて、震えているのだろうか?


怒りか、悲しみか、悔しさか


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