姉妹
気づけば毎日雨だった

今年の梅雨明けはだいぶ延びているようだ

じめじめとどんよりと



「「いってきます」」

美月と美紅はいつもと同じように声を揃えて玄関を後にした

美月との登下校の時間が美紅の唯一の楽しみだった

それだけが「前と変わらない」時間だったからだ

"宣戦布告"の日の放課後、なんとも気まずい空気が流れる美紅のクラスに明るい声で「美紅ー!早く帰ろーよー!」と言いながら美月が入ってきた

何か言いかけようとする美紅を遮るように美月は言った

「私は美紅を過剰に助けたりはしないけど、登下校くらいは一緒でも問題ないんじゃないかな?」と


こんな感じで登下校は変わらず共にしている


美紅にとってたったひとつの「普通の日常」

それは美紅の傷だらけの心を大いに癒していた

美月と話しているときだけは美紅は"人間"でいられた



学校という戦場に一人投げ出される不安は不思議となかった

直接助けたりしなくとも、その存在だけで美紅は支えられていたし、絶対に負けられないという意志を持ち続けることができた
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