風見鶏は一体何を見つめるか
「――えっ」

我ながらなんとも間抜けな声をあげ、黒板の
前に立つ人物をみた。

「藤枝ぇ、何をボーッとしとるんだ。受験生
だろうに、シャキッとせんか、シャキッと」

「……すみません」

「まぁいい。この問題、答えてみろ」

 ゴン、と黒板を叩き、解くべき問題を示す
数学の杉山。怒っている…と言うよりは呆れ
ている様子だ。

だけど問題すらも見てないのに、解ける訳
がない。

仕方ないので、解らないと素直に言おう。

また何を言われるかわからないが。

そう結論づけたとき、僕の机の上にノートの
切れ端が飛び込んできた。

パッと見た感じでは、いくつかの記号と数字、
時折文字が書いてある。

「97ページの問3」と、西村さんがそっと囁
いた。

『切れ端』の正体が何か分かると、僕はあ
りがとうと西村さんに小さく呟き、バレない
ようにその切れ端を盗み見ながら何とか問題
に答えることができた。



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