ラブソングをもう一度
どうしよう……
考えてみれば、俺はレイのこともなにも知らないんだな。
悲しい現実を突き付けられた気がして、泣きそうになった。
「……まったく。カイ君って、せっかちだよね」
聞いたことのある声が俺の名前を呼んだ。
反射的に振り向いたそこに立っていたのは、和泉だった。
「こっち」
ついてきて、と言ってスタスタと歩き始める和泉は、ここまで走ってきて汗だくの俺と違って平然としている。
「走ってきたの?あの距離なんだし、普通タクシーくらい乗るでしょ。冷静になりなよ」
相変わらずの流暢な喋りで、俺を挑発しながら、エレベーターに乗り込んだ。