ラブソングをもう一度
タクシーの中の俺は、みじめで、到底、格好付けれるような様子じゃなかった。
ただ黙って、時折、道順の説明をする和泉を、感情を込めずに見ているだけだった。
「ここだよ」
そこは、病院からそう遠くもない、路地を入ったところだった。
「RAY」という文字が掲げられた看板は、色を灯さず、ドアには「CLOSED」とだけかかれた札がかかっていた。
「どうぞ」
当然のように鍵を使い、ドアを開けてから、和泉が俺をライブハウスの中に招き入れた。
店の真ん中は、ステージになっていて、端のほうにカウンターが置かれていた。
「まあ、座ってよ」
カウンターを指して、和泉が俺を促す。