ラブソングをもう一度
アパートを出て、住宅街を歩く。
昼前の真夏の日差しに、目眩がした。
着いた先は、小さなライブハウス。
ドアノブに掛けられた「CLOSED」と書かれた表札が揺れている。
構わず、ドアを開ける。
薄暗い店内には、人の影はない。
「和泉。顔見せなさいって言ったのはあんたの方だよ」
息を吸い込んで、怒鳴ると、ステージの奥から、背の高い男が顔を出した。
「待ってたよ、レイ」
どこぞの有名アニメの怪盗のような出で立ちのその男が、あたしにメールをしてきた人物。
南波 和泉(ナンバイズミ)。
彼のお兄さんが、このライブハウスの経営者。
見た目通り、口八丁、手八丁の男だ。