ラブソングをもう一度
だけど、俺の心配をよそに、次の日も、そのまた次の日も、まだ彼女は俺の部屋に、住み着いたままだった。
俺は、その日のバイト帰りに雑貨屋へ寄り、赤いマグカップを買った。
どんな顔をするだろうか。
少し、わくわくしながら玄関のドアを開ける。
「おかえりなさい」
いつものように、キッチンに立つ君の姿に少し胸が高まる。
「ただいま。これ、今日からレイ専用だよ」
紙袋を渡し、中身を開けるように託す。
その間に、部屋に入り、スエットに着替える。
「これ……」
「実はね、レイが今まで使ってたマグカップ、歩美からもらったものなんだ。だけど、これからはそれを使って」
置いておいたままのコルクボードの写真を、1枚、1枚、丁寧に剥がした。
レイは、何も言わなかった。
履いていたデニムを拾い上げ、ポケットを探り、ライターを取り出した。
「それ、どうするの?」
俺が何をしようとしているのかを察したのか、ようやく、口を開いた彼女は、どこか不安気だった。