ラブソングをもう一度
無駄に広い、3LDK。和泉はここで、お兄さんと暮らしている。
と、言ってもお兄さんの本業は、医者で、あまり家に帰らないので、実質ここで一人暮らしをしているようなものだ。
「アンナさん、帰ってきてたんだ」
「またすぐ、出てくでしょ。節操無しのろくでなし。あんたと一緒」
他愛もない話をしながら、リビングに置かれた皮のソファーに腰を下ろす。
遠慮など、ない。
「おっ、嬉しいね。レイそっくりの美人のアンナさんと、一緒だなんて」
おどけたように、言う和泉に、呆れた視線を送る。
独特のペースを持ったこの男は、実は劣等感の固まりのような人間だと思う。
そんなこと、きっとあたし意外は知らないのだろうけど。
「で?どんな男に恋をしたの。レイちゃんは」
そして、この男の前で嘘なんか吐けないあたしがいることも、また事実。