君に嘘を捧げよう

入って早々、アヤネの部屋に連れて行かれた。

「じゃ、ちょっとお茶入れてくるね。荷物その辺に置いといて」

「…ら、らじゃー」

初めて入った、女の子の部屋。

キレイに片付いてて、いいにおいがする。

俺の部屋とはまったく逆。

「………」

やばい、ドキドキしてきました皆さん(いや、俺だけなんだけどね?

まわりを見ると、一冊のアルバム。

…アヤネの幼少期とかが見れちゃうわけですかね?

興味本位でアルバムの中身を開いた。

するとそこには。

「…」

アヤネの隣にはいつも同年代の男の子。

「『タクト』…」

『タクト』はホント俺にそっくりだ。

だけどドッペルゲンガーみたいに瓜二つなのに俺は。

「『タクト』のかわりには、なれない」

どんなに似ていても、どんなにそっくりでも。

『霧沢タクト』という人間はひとりしかいないし、

霧沢タクトという俺もひとりしかいないんだ。


< 73 / 99 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop