君に嘘を捧げよう
入って早々、アヤネの部屋に連れて行かれた。
「じゃ、ちょっとお茶入れてくるね。荷物その辺に置いといて」
「…ら、らじゃー」
初めて入った、女の子の部屋。
キレイに片付いてて、いいにおいがする。
俺の部屋とはまったく逆。
「………」
やばい、ドキドキしてきました皆さん(いや、俺だけなんだけどね?
まわりを見ると、一冊のアルバム。
…アヤネの幼少期とかが見れちゃうわけですかね?
興味本位でアルバムの中身を開いた。
するとそこには。
「…」
アヤネの隣にはいつも同年代の男の子。
「『タクト』…」
『タクト』はホント俺にそっくりだ。
だけどドッペルゲンガーみたいに瓜二つなのに俺は。
「『タクト』のかわりには、なれない」
どんなに似ていても、どんなにそっくりでも。
『霧沢タクト』という人間はひとりしかいないし、
霧沢タクトという俺もひとりしかいないんだ。