さくら、ひらひら。
アラームの音で目が覚めた。
あたしはいつもより早く起きて、
お母さんがいつもどおり家を出ていることを確認し、
〝あの人〟と鉢合わせしないように
そっとリビングに向かった。
「お、弥生ちゃん?早いね」
〝あの人〟はあたしを待っていたみたいに
あたしの姿を見てふわっと笑った。
かなり間を空けて、
「…おはようございます」
「あ、何か作ろうか?
…って言っても、スクランブルエッグしか作れないけど」
「結構です」
「そっか…」
悪い人じゃないってのは、すごくわかる。
わかるけれど、〝あたしの空間〟を邪魔されたいわけはない。
「弥生ちゃんはコーヒー派?それとも紅茶派?」
あたしは黙って、冷蔵庫からオレンジジュースを取り出した。
「あぁ、朝のジュースっておいしいよね」