ド ロ ボ ウ ネ コ (改)
「…チカちゃん」


暗闇の中から声がする。

振り向くとお母さんが立っていた。


「何してるの?」

「…水飲みに来ただけ」

「そっか…」


変な空気が流れる。

本当に親子なのかと疑いたくなるような、よそよそしい空気が。


「ねぇ…チカちゃん」


お母さんが言いづらそうに口を開いた。


「そろそろ結平のこと…お父さんって呼んでみたらどう?」


何言い出すんだ、この人は。


「結平も寂しいと思うの。だから…」


呼べるわけがない。

自分の好きな人を…

…「お父さん」なんて。
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