ド ロ ボ ウ ネ コ (改)
初めてお母さんのもう一つの顔を見た夜。

あたしはベッドに潜って耳をふさいだ。

目を閉じた。

涙を流した。

お母さんの二つの顔…


『綺麗な優しいお母さん』


そして、


『体を売り物にする女』


それを知るのには幼過ぎた。

理解するには大人になるしかなかった。

毎晩のように流れていた涙はいつしか止み、耳をふさいでいた手を離す。

あたしはあの日、何も与えられないまま大人になったのだ。
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