小さな僕
おじいちゃんに連れてこられたのは、古くて大きなお家。
お茶の間には、古い時計が架かっていた。
「寒かったろう。今ストーブつけるから座りなさい」
さっきとは違って優しい笑顔でおじいさんはそう言った。
お母さんは「すみません」と言って僕の隣に座った。
「今日は、どこに泊まるんだい?」
「いえ…まだ決まってないです」
「ならここに泊まんなさい。ここらで民宿なんてそうそう無いからねぇ」
「でも…」
「良いんだよ。
年よりの我が儘だって思って気楽に泊まっておくれよ。
女房も先月他界して子供も孫も居なく一人きり。
寂しいんだよ」
「…すいません…じゃあお言葉に甘えて…」
お母さんは座ったまま頭を下げた。
僕も慌てて頭を下げる。
おじいさんはやっぱり優しい顔だった。