小さな僕
健太は小さいから
まだ何も知らないだろう
わからないだろうって
私思ってたの。
だけど違かったね
『くじらの背中に乗れなかったね』
私は自分の愚かさに気付いた。
子供になんて残酷なことを言わせてしまったんだろうと。
健太は知らなかったんじゃない
ずっと知らないフリをしていたのね。
わかっていて私と一緒に海に逝こうとした。
こんなに小さい健太を
ずっとこんなふうに傷つけていた自分を恨んだ。
悔やんだ。
夫が離婚した時に置いていった莫大な借金を、返済するのに切羽詰まって、まわりが見えなくなっていた。
毎日の様にかかってくるヤミ金からの電話も私をおかしくさせた。
電話線を抜いて、
そのときにはもう決めていた。