しろうさ恋日記。
結局…………名前を呼ぶ練習は全くうまく出来ませんでした……………。
「…………夜兎。」
弟の名前を呼んでみる。
「…………ナニ?しろうさ。」
いきなり名前を呼ばれて夜は不思議そうな顔をして、きょとんと首をかしげた。
パパ譲りの艶々した黒髪がサラリと揺れる。
「…………こんなに簡単に言えるのになぁ………。」
「………。」
わたしは夜をほっといて…はぁーー…と長いため息をついた。
そしてそのままとぼとぼと玄関に向かう…迷惑なわたし…………。
「…………最近、しろうさ病気じゃねぇ?…ハル、診てやったらー…………ナニ目頭押さえてんの??」
「…………お父さんは獣医だ。」
「……………しろうさってさぁ……彼氏…………ムグ…」
「夜くん、学校行こうねぇ~。」
「…………なんで口ふさぐ………」
「………仕事行ってくる。今日はサクラ(チワワ)のオペだった。」
「パパ、いってらっしゃーい!」
「…………何なワケ……??」
パパ、申し訳ないです。
家を出たわたしは………
「どうしたら自然に名前を呼べるのかなぁ……?」
頭は彼氏さまでいっぱいです。