しろうさ恋日記。
【side咲夜】
……結局昨日はあまりよく眠れなかった。
朝まで家の道場で弓をひいていたとか…バカだ……。
はぁ…とまたため息が出る。
あの子は何をしてるのかな……。
なんて名前なんだ?
そうか…。俺、名前も知らないのか……。
何だかがっくりと落ち込んだ。
「咲(サク)ちゃん!おはよ!……って、何落ちてんだよ??」
暢気でテンションの高い声にうんざりしながら顔をあげて、そいつの顔を見た。
「……おまえは今日もうるせぇな」
ボソッとつぶやくと、うるせぇ男は朝からひでー!とギャーギャー騒ぐ。
騒ぐ度にふわふわした茶髪が揺れて右耳につけているシルバーのピアスがキラリと光った。
こいつは長谷部茜(ハセベ アカネ)。
中学の時からの悪友。女の子みたいな名前だけど、女の子に話しかける時に役に立つ…と、本人は非常に気に入っているらしい。
まさに…女大好きっ!と公言して憚らないタラシ。
なまじ顔もいいもんだからヤツの毒牙にかかった女の子は数知れず……。
弓道一筋で女の子にたいした興味もない俺とは正反対だ。
それなのに、なぜか長々とつるんでいる俺達……。
タラシだけど、裏表なく意外と友達思いなコイツは一緒にいてとても楽なヤツなんだ。