「キカイ」の子
冬彦は一階に来ると、ロビーの形が以前と違うことに気づいた。


どうやら、ここは、以前に冬彦が来た時とは別の棟のようだった。




冬彦はここを通っているはずなんだが、思い出せなかった。




冬彦が辺りを見回していると、透が低い声で冬彦に話し掛けた。





「冬彦。こんなことになった今じゃ、隠してても無意味だから言うな…」


「うん。」



冬彦が振り向くと、透は悲しそうな顔をしていた。






「あのな…夏美は…病気なんだ…」


「病気…?」




「あぁ、なんかよくわかんねぇけど、薬が…まだ、見つかってない病気らしい…」


「それって……」


「治んないんだよ。夏美は。」




そう言った、透の声は震え始めていた。
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