「キカイ」の子
「夏美に理由をきいても教えてくれないから、いったい、どんなやつなのかと思って、それから、そいつに勝ちたいって思った。」


「透…」


「まぁ、結果は、おまえがぶっちぎって優勝、オレは二位だった。」




冬彦はレースの結果など覚えていなかったが、透の記憶には鮮明に残っていたようだ。


「それからも、何度もおまえに挑戦した。まぁ、いっつも勝てなかったけどな…」


「透…それで、あんなに、勝負勝負って…」


「まぁ、最近のは挨拶変わりで本来の意味なんかなかったけどな。」



そこまで話して冬彦は重要なことに気づいた。


「ちょっと待って…透、さっき、好きなやつの好きなやつって…」


「あぁ…」


「じゃあ…透は…まさか…」





しばらくの静寂の後、透が口を開いた。






「オレは夏美がずっと好きだった。冬彦と会う…ずっと前から…」
< 105 / 363 >

この作品をシェア

pagetop