「キカイ」の子
「そんな…」


冬彦は驚きのあまり絶句した。


そんな冬彦を無視して、透は話を続けた。


「正直、夏美の気持ちが、冬彦からオレに変わってくれればって何度も思った。…だからバカな話して、夏美の気を引こうって必死だった。……でも無駄だった。」



そこまで言うと、透は泣きそうな顔をした。



「透……」



冬彦は、たまらず声を出したものの、続く言葉が見つからず、また黙ってしまった。


「でも、今なら、夏美の好きなやつがおまえで良かった、って思える。」


「透……」


「だって、冬彦はオレの親友だしさ、イイやつだって嫌っていうほど分かってる。」


透は、そう言って笑ってみせた。





冬彦には、その笑顔がこれまで見てきた笑顔の中で一番、切なく思えた。
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