「キカイ」の子
「夏美ちゃんが目を覚ましたよ。」



健一は、ロビーに着くと、冬彦達に言った。



「行ってこいよ。冬彦。会って、話さなきゃいけないだろ。」



「え…?」




透の発言が意外で、冬彦は透を見た。





「透も一緒に…」


「バカ。一人で行けよ。」



透は、軽く笑って、冬彦に言った。


その言葉を聞いて、冬彦は透の意志を理解した。




「…わかった。行ってくるよ。」


冬彦はそう言うと、階段の方へ走り始めた。




冬彦の姿が見えなくなった後、健一が、ソファーに座って、うつむいている息子の前にしゃがみ込んで、顔をのぞき込んだ。







透の目には涙が浮かんでいた。



「バ~カ。子供のくせに、カッコつけすぎだ。」


健一が笑ってそう言うと、透の顔がグニャリと歪み、大粒の涙が目からこぼれ落ちた。



「うっ…ひっ…うわぁぁぁっ!」


透は健一の胸に顔を押しつけ、今まで我慢していた分、思いっきり泣いた。



そんな息子を抱きしめながら健一は、


「でも、カッコよかったぞ。」

と、笑顔で呟いた。

暗いロビーにくぐもった泣き声が小さく響いた。
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