「キカイ」の子
「-ーっ…う、うん。」




冬彦は痛む胸を押さえ、何とか答えた。





彼女は、下を向いたままなので、冬彦の異変には気づかなかった。







「……ゴメンね。ホントは…話したかったんだけど…勇気がなかったんだ…」





夏美は震える声で、最後の方は自嘲気味に言った。







「高椿君に…この体のこと、あたしの命のこと…もし、知られたら……高椿君が…あたしから…離れていくような気がしたから…」







夏美は、胸を押さえて、黙って立ち尽くす冬彦を見ずに話した。





「あたし…高椿君に…側にいて欲しかった…」





夏美の声は、もう涙声で、彼女に握りしめられたシーツには、滴が何滴も落ち、静かに、そのしみを広げた。








そんな夏美の様子を見る度に、冬彦の胸の痛みは激しくなっていった。
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