「キカイ」の子
「高椿君っ!」




夏美の病室に戻ろうとした健一が、病室から出てきた冬彦の異変に気づき、駆け寄った。






幸い、病室からは死角になっていて、夏美に知られることはなかった。





冬彦は、健一に肩を掴まれながらも、頭を押さえ、フラフラと歩き出した。






「鍬原さん…を…泣かせた……僕は…何にも…できなかった。」




冬彦は、ボソボソと呟きながら歩いている。





健一は険しい顔で、冬彦の前に回り込み両肩を掴んだ。






「違うっ!君のせいじゃないっ!しっかりするんだっ!」





健一がそう呼び掛けても、冬彦はまるで廃人のように、ボソボソとまだ呟いていた。
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