「キカイ」の子
「あ…起きてたんだ。」





入ってきたのは夏美だった。





「鍬原さん…」





冬彦は、シーツに埋もれた手を、固く握りしめ、夏美から目をそらした。







「…ちょ、ちょっと~なんで、高椿君がブルーなわけ?あたしが倒れたんだよ?」




夏美はうつむいている冬彦に歩み寄ると、明るい声で言った。




「え…?」




冬彦は、彼女の明るさが意外だったので、上擦った声を出した。





「鍬原さん…大丈夫なの?」







「え?あぁ、へーきへーき、思いっきり泣いたらすっきりしちゃった。」






夏美はそう言って、笑い飛ばした。








冬彦は、その笑顔が、自分を励ますために作られたものなんだと、瞬時に分かった。
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