「キカイ」の子
「透達のため…?」



健一の言葉を理解できなかった冬彦は、不思議そうな顔をした。







「そうだ。彼らは、君が隣で苦しんでいるのを見る度に、傷つくんだ。…何で話さなかったのかってね。」







透達が…







冬彦には、彼らのそんな姿が、簡単に想像できた。






「君がこれ以上苦しめば、透達はさらに苦しむことになる。だから、もう、自分を責めるのは、止めなさい。」







健一がそう言うと、冬彦は、しばらくうつむいて黙っていた。








そして、ゆっくり顔を上げた。








その目には明かりが灯っていた。






「……吹っ切れたようだね。」






冬彦の顔を見た健一はそう言うと、腰に手をあてて、椅子から立ち上がって、空を見た。








雲一つない空が広がっていた。
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