「キカイ」の子
「うん。ありがとう。でも、本当にごめんね。」



冬彦は、そう言って、頭を下げた。



「お、おい。」

「高椿君…」



透と夏美はそう言うと、黙ってしまった。





静寂の中、冬彦はゆっくり顔を上げて、笑顔を浮かべながら話した。






「それと…僕を気遣ってくれて、ありがとう。」





それを聞くと、透は恥ずかしそうに頭を掻いた。



「や、止めろよ。恥ずかしいだろ……夏美?」





透が尋ねた時、夏美は肩を震わせ、下を向いていた。





「何だよ。泣いてんのか?」



透にそう言われ、夏美は顔を伏せたまま、指で涙を拭き取り、顔を上げた。



「な、泣いてないわよ…」



だが、目にたまった涙がポロポロとこぼれた。






彼女の泣き顔は前のと違って嬉しそうだった。
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