「キカイ」の子
「やっぱ、泣いてんじゃねぇか。」


透がおどけて、そう言うと、夏美は涙を拭きながら、



「うっさい!……でも、高椿君が元気になってくれて本当に良かった。」


と冬彦の方を見ながら言った。




「あたしも、心配してくれて…ありがとう。」



夏美は笑ってそう言った。






冬彦の胸は、彼女の笑顔を見た途端、高鳴った。





夏美は笑いながらも、まだ泣いていた。



「あれ?涙、止まんないや…」




「鬼の目にも涙か…」



「透ぅ?誰が鬼だって?」




夏美はそう言って、ベッドのわきにあった花瓶を取った。




「止めろっ!それはマジで危ないっ!」


透は驚いて、手で防御しながらパイプ椅子から立ち上がった。











「…鬼に金棒…」



冬彦が二人の間でボソッと呟いた。











「…も、もう!高椿君っ!」





夏美は顔を真っ赤にして、上擦った声で言った。







それから透が笑い出し、冬彦も笑いだした。



夏美も最初はムッとしていたが、遂には笑いだした。






狭い病室に三人の笑い声がこだました。
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